昔、薬物分析の仕事をしていたことがありまして、
学会発表などすれば、麻薬取締官から
質問や相談を受けたりしたものですが、、、
ある時、ニコチンを分析しようとしたら、これがとんでもない。
ガスクロマトグラフという機械で分析するのですが、
買って来た(試薬として売っている)ニコチンは、
雑多な化学物質の集まりで、
検出したデータのどれがニコチンかもわからないという、
とんでもない代物でした。
なぜ、そんなことが起こるのでしょう?
どうも、ニコチンは酸化しやすく、
すぐに分解して別の物質になってしまうようなのです。
そこで、まずは市販の試薬を蒸留して、
きれいなニコチンを精製しようとしました。
透明すり合わせという高価なガラス器具を使って、
暗い褐色の液体から、黄味がかった透明な液体を
蒸留によって得ることができました。
そして、、、
惨事はその後で起きたのです。
得られた液体は、別の容器に移し、私は蒸留装置を分解しました。
ひとつひとつの部品をバラバラにしながら、
洗い桶(台所で使うのと同じ)に入れていきます。
本格的な洗滌は、あとでパートの方に任せるとして、
軽くすすいでおこうと思ったのですが、これが大間違い。
危うく、命を落とすところでした。
何をしたかといえば、洗い桶にお湯を注いだだけなのですが、
失神する一歩手前で、お湯を水に切り替えてことなきを得ました。
いや、恐ろしい毒薬です。
ちなみに私、当時も今も、煙草が吸えない体質ではありません。